血流や酸素不足を改善するためには、自律神経のバランスを整えることが重要です。自律神経には、私たちがアグレッシブになるための交感神経と、リラックスモードになるための副交感神経があり、この2つの神経で健康状態のバランスを保っています。
現代人の過剰なストレスによる交感神経の過緊張が、大きな問題点になっています。食事、運動、睡眠、そして人間関係、日々の生活習慣でのイベントが、いつのまにか交感神経をノンストップで刺激し続けているような人が多いように思います。
交感神経が頑張りすぎると、顆粒球(かりゅうきゅう)というタイプの白血球が増えます。顆粒球は細菌をやっつける免疫細胞ですが、増えすぎると大量の活性酸素が発生し、血液がドロドロになってしまいます。ドロドロ血液は血行を悪化させ、低体温を作り出します。
また血管は収縮と拡張を繰り返して、酸素を含んだ血液を身体の隅々まで送り届けていますが、この血管の働きを調整しているのは自律神経です。ところが、長時間労働や人間関係のストレスが続き、自律神経のバランスが交感神経へ偏った状態が長くなると、血管は収縮しっぱなしになり、すみずみの血流が滞ります。
「ストレスは危険で悪いものだ」、と信じていませんか? もしそうでしたら、是非その考え方を捨てることをおススメします。ストレスのない仕事はあり得ませんし、仕事の意義や充実感は、ストレスの大きさと比例します。
たしかに、強いストレスがある場合には、死亡リスクが43%も高まるという研究があります。ただし、スタンフォード大学の心理学者ケリー・マクゴニガル(Kelly McGonigal)によると、死亡リスクが高いのは、「ストレスは健康に悪い」と信じている人たちだけで、強いストレスがあっても「ストレスは健康に悪い」と思っていない人たちには、死亡リスクの上昇はありませんでした。むしろ、このグループはもっとも死亡リスクが低かったのです。
世の中には、ストレスに対するネガティブな情報が多いので、ストレスを減らそう、避けようとする癖がありますが、「ストレスの考え方が変われば、もっと健康で幸せになれる」と思うことができれば、現在のストレスが自分を健康にする成長因子へと変わるかもしれません。
「ストレスが危険で悪いもの」と信じ続けていることが、交感神経を刺激し続けている可能性がある人は、まずはそのストレスに対する感情や思考パターンを変容するだけで、自律神経のバランスが整う可能性を是非考えてみてください。自律神経が整っている状態というのは、心(感情や思考)のバランスが整っている状態でもあります。
医療法人「愛咲会」理事・医療統括責任者